Sunday, April 8, 2007

KMLA on Yomiuri Shinbum



「リーダー」国挙げ育成



 国内では批判もある「エリート教育」は、本当にタブーなのか。
 底冷えのする韓国ソウルから車で2時間半。江原道にある私立高校「民族史観高校」は東京ドーム27個分のキャンパスを持ち、校舎まで続く道の傍らには15基の台座が並ぶ。卒業生からノーベル賞受賞者が出た場合に銅像を建てるためだ。
 韓国を代表するエリート養成校として知られ、ホテルのような12階建ての寮のほか、国際人として困らないためにゴルフ練習場もある。授業は国語と歴史以外、すべて英語だ。
 「各界のリーダーとして世界を舞台に勝負してほしいから」と、李敦煕校長(68)。1996年の開校以来、内外の一流大学に人材を送り出し、卒業生は官僚や研究者などとして活躍中だ。
 韓国政府は2000年、エリート教育に国を挙げて取り組む「英才教育振興法」を制定。03年には同法に基づき、民族史観高校をモデルにした国立高校「韓国科学英才学校」を釜山(プサン)に開校した。生徒は大学教授の指導も受け、物理や数学など専門分野の研究を進める。毎年1本の論文提出が義務付けられるが、成績優秀者は提携する国内の大学に無条件で進学できる。


 だが、なぜエリート養成なのか。政府機関・科学技術部科学技術人育成課の金在植課長(52)は「資源が少ないわが国では、英才1人が約3000億円の価値がある。そのためには、人を育てる政策が必要だった」と、説明する。
 韓国だけではない。韓国教育開発院英才教育センターの徐恵愛所長(46)が注目するのは、ブッシュ米大統領による今年1月の一般教書演説だ。中国やインドの台頭に、理数系教師の7万人採用など、科学教育のすそ野の強化策を打ち出した。その中国は1995年、「科教興国」のスローガンを掲げ、先進国に国費留学生を大量に送り込み、長期的視野で育成に取り組む。小学校からエリート教育を行う「重点学校」もある。
 シンガポールは小学校段階の2回のテストで、その後の進学先が決まってしまう。批判はあるが、「徹底したエリート教育が人口約400万の小国が繁栄できた理由」と、白百合女子大の田嶋ティナ宏子助教授(44)は説明する。


 翻って日本では、第2次世界大戦後、エリート教育はながらくタブー視されてきたが、ここにきて変化の兆しも見えてきた。
 慶応大は予備校と協力して、少数精鋭の現役高校生を対象とした先端科学の連続講座を開く。国際会議で発表する力をつけるため、科学英語も学ぶ予定だ。今月8日には、トヨタ自動車などが運営する海陽中等教育学校が、愛知県蒲郡市に開校する。モデルは有能な人材を輩出する英国・イートン校で、知識詰め込み型の受験エリートを超えたリーダー育成を目指す。
 官僚の不祥事や政策立案能力の低下が言われる中、東京大は時代が求める官僚を養成する大学院を設置した。早稲田大は、リーダー養成のため、ジャーナリストの田原総一朗氏を塾頭にした「大隈塾」をスタートさせた。改革派の知事などが進めるのは、高校生を対象とした「日本の次世代リーダー養成塾」だ。
 その根底には次のような問題意識がある。「極端な平等主義教育の中で、日本には国際的に活躍できるリーダーが育っていない」(塾長代理の榊原英資・早稲田大教授)。日本もようやく重い腰を上げつつある。(白石洋一)

(2006年4月1日 読売新聞)








全寮制 精神修養にも力





 韓国の全寮制エリート養成校をのぞいた。
 大韓の英才たちよ 一つになって進もう 我々は祖国愛を一時も忘れない
 新入生が校歌の練習をしていた。「呼吸が大事だぞ。背筋をきちんと伸ばして」。男性教諭が韓国の打楽器「チャング」をたたきながら声を張り上げた。
 私立民族史観高校では全員が伝統楽器を学び、テコンドーや韓国流剣道も習得する。3年間で80時間のボランティア活動も必修だ。
 「リーダーや研究者である前に、人間として精神力や心を磨くことが重要。エリートは伝統や文化を重んじることも大切だ」と語る李敦煕校長(68)は、自主性を育てる取り組みにも力を入れる。遅刻や外出違反をした生徒は、生徒自身による「法廷」で裁かれる。罰則は書写。昨年から、テスト試験監督は置かないことにした。
 入試の出願は、英語の能力試験TOEFLの得点や中学での上位5%以内の成績が条件。図書館には海外の書籍約6300冊を持ち、米国の大学教授の講義を収めたDVDも用意する。




 国が全面支援する国立韓国科学英才学校には、蔵書が1万冊を超える科学専門図書館やプラネタリウム設備がある。校内に個々人の学習机があり、原則、午前8時~午後9時30分は帰寮できない。一方で、息抜きのため、ビリヤード場やカラオケルームも備える。
 やはりテコンドーを通して礼儀や忠誠心を学ぶ。ボランティア活動は3年間で120時間だ。教諭の7割が博士課程修了者。ロシアで英才教育に携わった物理学者も教師に招いている。
 入試には4泊5日のキャンプがある。生活態度も観察されながらリポートを書く。今年の入試倍率は17・35倍に達した。初めての卒業生を送り出した鄭天守校長(60)は「ノーベル賞がとれる人間が出てほしい」と期待する。




 両校の生徒には、国家や社会に役立つ人間でありたいという気持ちが強い。
 「韓国は日本との間で外交問題を抱え、朝鮮半島の統一問題も未解決。そういう問題に携わりたい」と外交官志望の崔恩永さん(17)(民族史観高校3年)。中学2年から韓国科学英才学校に飛び入学したばかりの宋瑞祐君(15)から「国立学校だから国家に役立つ人間になるのは当然。論文ねつ造問題で、失墜した世界的な科学の地位を挽回(ばんかい)したい」といった発言が出る。
 韓国の英才教育振興法第1条には「才能が優れた人物を早期に発掘し、生まれ持つ潜在力を啓発できるよう、能力と素質に合う教育を実施し、個人の自己実現と国や社会の発展に寄与することを目的とする」とある。その狙いは生徒に染みついている。(白石洋一、写真も)
 韓国の全寮制エリート校 民族史観高校は1996年開校で1学年約150人。年約150万円の授業料は韓国の高校で最高額。乳製品メーカーが英イートン校をモデルに設立、世界に出ても韓国民としての誇りを持ち続けてほしいと命名した。2003年開校の韓国科学英才学校は1学年約140人。授業料は年約15万円だが、全生徒が奨学金を受け、寮費も国負担で、実質的には無料。両校とも男女共学。



 韓国科学英才学校3年、ある生徒の1日
 6:30  起床   
 7:30  登校、朝食
 (朝食後) 予習復習 
 9:00  授業   
 13:00 昼食   
 14:00 授業   
 18:00 夕食   
 19:00 読書   
 21:30 夜食   
 22:00 宿題   
 23:30 帰寮   
 24:00 英語本読書
 25:00 論文作成 
 26:30 就寝   
 民族史観高校の1日(学校案内から)
 6:00  起床  
 6:30  心身鍛練
 7:00  朝食  
 8:00  登校  
 8:30  授業  
 12:20 昼食  
 13:40 授業  
 15:40 個別学習
 17:30 夕食  
 19:00 自習  
 21:00 夜食  
 22:00 自習  
 23:50 就寝  
(2006年4月5日 読売新聞)








韓流モーレツ、危うさも



 韓流の英才教育は日本の参考になるのか。
 「盧武鉉大統領自身も『国家の競争力を高めるために英才教育が必要だ』と考えている」。韓国の英才教育全般の研究を進める「韓国教育開発院英才教育センター」の徐恵愛所長(46)は、韓国の英才教育は国を挙げた一大プロジェクトだと強調する。
 韓国政府は、2003年開校の韓国科学英才学校のほか、10年までに「情報」と「芸術」の英才学校を作る方針だ。これらの高校への進学をめざす生徒を、全国の各学校が開設している英才学級などが支援する。
 センターは01年、こうした施策を担保するため、各自治体が推薦した優秀な教諭の研修制度も確立した。その数は5年間で約4000人。教諭は60時間の基礎研修を終えると、より高度な120時間の研修に臨み、自ら開発した英才指導法についての論文も書く。




 英才教育は、何より保護者の期待が高い。日本の文部科学省にあたる教育人的資源部科学実業教育政策課の金鐘冠課長(56)は「韓国では教育が身分上昇の唯一の手段。親は自分の子供が英才だと認めてもらうことが一番の誇り」と直截(ちょくせつ)に語る。
 ただ、政府の狙いと国民の思いには微妙なずれもある。たとえば、日本と同じ「理数離れ」の問題だ。
 日本の大学入試センター試験にあたる「大学修学能力試験」では、1995年に自然科学系の志願者は全体の41・8%。それが2004年には31・5%に。徐所長は「97年の通貨危機で真っ先にリストラされたのが企業の研究者だったせいもある。最近は優秀な学生が医者や弁護士に進む傾向もある」と話す。




 一方、「政府は英才教育の対象者を拡大する方針だが、英才教育は本来、数ではなく質を上げるべき。なのに数字だけが独り歩きしている」との意見もある。
 日本の鳴門教育大で客員研究員を務めた釜山(プサン)大学校師範大学の金富允教授(51)の指摘だ。金教授は、その上で「日本が韓国のように英才教育を急速に進めることは勧めない。最近は学歴は高いが人格の面で問題がある若者も多い。むしろ、人間教育を大事にする視点が大切では」と警鐘を鳴らした。
 周囲の過度な期待がかえって、本人を追い込むという声もある。一例が、ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)前教授(懲戒免職)による論文ねつ造事件だ。しかし、日本でも、東大や阪大などで論文偽造に関する疑惑が浮上、米国でも同様の問題が起きている。英才教育が不祥事の根源との見方は、皮相に過ぎるのではないか。
 急速な工業化成功の勢いに乗り、やけどしそうな愛国心にも結びついた韓国の英才教育には、危うさも感じる。その一方で、教育改革を果敢に進める躍動感は日本では感じづらいものだ。要はバランスということだろう。(白石洋一)



 ■英才教育に賛成「52.4%」
 韓国の数学教育専門塾が小学校5年生―中学2年生1612人を対象に行った英才教育に関するアンケート結果(昨年1月発表)によると、賛成は52.4%、反対は29.8%。賛成の理由では「自分のレベルに合うから良い」がトップで、58.1%。反対の理由は、「競争が激しくなるのでつらい」が35.9%で最も高く、「差別、不公平」が21.2%、「格差が広がる」が11.4%で続いた。
(2006年4月8日 読売新聞)





<http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20060401us41.htm>


p.s
-Thought it'd be a good reference to see how the Japanese would take KMLA.

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